名盤シリーズ#6

金曜日, 7月 11th, 2008 @ 13:20:33 | blog

今日は、次の仕事へ向けての準備日。

セットすると大した事ないように見える機材も、ラックに詰めてトランポ状態で積み上げれば、結構な量になる。

この仕事を始めた時から思う事は、機材が、より小さく、より軽く、ならないか、ということ。

しかし、昔に比べれば、これでも相当小型化したんだけどね。

で、何をするのか? 録音に行くのですな。普段僕らは、スタジオで録音しているわけだが、モノによっては、うちのスタジオでは録れないものもある。狭過ぎたり、録音する場としての音響に不満だったり・・

今回は、ブラスバンドを録りに行く。これは、多重録音の無い一発録音なので、ライブ録音とも言える。楽しみ楽しみ

で、今日、紹介する一枚も、ライブ盤だ。・・・僕の人生を変えた一枚だ。

cimg1007.JPG

タイトル:   ライブ・イン・ジャパン

アーティスト: ディープ・パープル

プロデュース: ディープ・パープル

エンジニア:  マーティン・バーチ

1972年 大阪フェスティバルホール・東京 武道館

この作品を初めて聞いたのは中三になった春。

この件は、ブログの一月に詳しいので割愛する。

とにかく衝撃だった。これを聞いていなかったら、恐らく僕はバンドをやっていない。

もしそうだとしたら、僕の人生はどうなっていたのか・・・・まったく違ったものになっていたのは間違いない。

それほどこの作品は僕にとって重要なのだ。

しかし今日は、あえてサウンドのみに絞って語りたい。

バンドサウンドが凄まじ過ぎるあまり、この作品の音の良さについて語られる事は少ない。

しかし、この作品のエンジニア、(イン・ロックからカム・テイスト・ザ・バンドまで)マーティン・バーチの腕はただ事ではない。

ディープ・パープルの作品全体にいえる事だが、非常に音がクリアーだ。

この点、同時代のライバルといわれたZEPとは対照的だ。

爆発するエネルギーをそのまま録ろうとしたZEPと、熟達した演奏家集団のパープルの、端正ともいえる演奏スタイルとの違いからだと思う。

分かりやすく言うならば、各楽器を溶け合わせ、その場の空気感まるごと録りたいZEP。
※これは、ともすれば、音が団子状態になることを意味する。

できるだけ各楽器を分離してクリアに録りたいパープル。

更に言えば、近い音を嫌ったZEPと、目の前に張り付きそうな音を好んだパープル。

※面白いのは、こんなに近く音を録っても、アメリカンロックのように乾いたサウンドになっていない点だ 。
あくまでもブリティッシュらしく、ウェット感を伴った近さなのだ。・・・名人だな〜。

このブリテッィシュ・ハードロックを代表する二大バンドは、有る意味、対照的なサウンド指向を持っていたようだ。

こうしたパープルの持つサウンド指向にピッタリの録音テクニックを持っていたのが、マーティン・バーチだといえるのではないだろうか。

そんなバーチのテクニックがより分かりやすいのがこの作品だ。
ライブステージを上空から撮った写真をジャケットに使用しているため、かなりの情報が手に入る。

例えば、ドラムにはどんなマイキングが施されたか、とか、ボーカルマイクが、リードボーカルのイアン・ギラン1本しか無い、とか、ステージ上には一切のコロガシモニターが無い、とか。

ドラムマイキングに関して言えば、キックとスネアはシュアーのダイナミックマイク。スネアのボトムは無し。トップは、恐らくノイマンのU-67。タムが難問なのだが、・・多分、コンデンサーの何かだ。

ボーカルが1本ということは、ライブを録る上でこの上も無いアドバンテージだ。

何故なら、ボーカルマイクのゲインが、全マイクの中で最も高い。ゆえに1本でも増えれば、それだけ被りが増える。つまり、音が濁る、ぼやける、要素が増えるのだ。

同様に、コロガシがないため、被りが少ないすっきりしたサウンドになっている。

※(コロガシ自体が、この時代にはまだ無い!!! が、ステージ下に、当時名機と言われた、シュアー・ボーカルマスター?というボーカルアンプが2本立っている。ジャケット内フォトで確認できる、マーシャルのPAスピーカーがドラムの横に立っているが、ひょっとすると、これもボーカルモニターかも? いずれにしても、現代と比べれば、聞こえないに等しい環境で唄っていたに違いない。)

つまり、当時のディープ・パープルのライブセットそのものが、音が良くなるための条件が満たされていたのだ。

一頃、このアルバムには様々なゴシップが囁かれた。いわく、かなりの部分をスタジオで録り直した、だとか。

結論から言えば・・・ナンセンスだ、そんなもん。

僕は、ありとあらゆる角度からこの作品を聴いてみた。・・で、あり得ない。

ボーカルのサウンドは明らかにライブ用マイクの荒れたサウンドだし、リッチーは、かなり間違っているし、マーシャルのサウンドはこの作品だけのサウンドだ。

良過ぎたためのデマだろう。

それにしても、この凄まじくドライブしまくったサウンドは、熟練したミュージシャンの底力をまざまざと見せつけられる。

ドラムは、抜けまくったスネアに粒が見えそうなシンバル。キャリア中最高だと思われる、リッチーのストラト+マーシャル・メイジャー200+ブースターのサウンド。ハモンドのトーンバーを自在に繰りながら、ボリューム操作だけでマーシャルから変幻自在のサウンドを奏でるジョン・ロード。こうして聴くと、改めて存在感の大きさに驚かされるロジャー・グローバーのベース。 一個一個の音が本当に良い。

あえて失礼を承知で言えば、この時期のパープルは誰がやっても良い音で録れたかも知れない。それぐらいバンドの演奏レベルが高い。

当然、そんなことは無いのだ。どんな素晴らしい演奏も、素晴らしいエンジアが録ってこそ素晴らしいサウンドになる。

では、彼(マーティン・バーチ)のどこが素晴らしいのだろう。

まず、ロックバンドのサウンドを録る際、胆になるのはドラムだ。うまいドラマーの場合、マイキングがその仕事の大部分になる。どんなマイクをどこにセットするか。そして、適切にヘッドアンプを調整し、適切なEQを施す。そして、アナログテープの場合、飽和気味のレベルで録音する。

※この時代の機材の良さも見逃せない。このライブ録音でも恐らく使用された、U-67に代表される、この時代のチューブ・コンデンサーマイクロフォンや、ニーブもしくはAPIの卓、スチューダーの16トラック・レコーダー等は、現代の最先端技術を持ってしても、有る意味届かない音質の良さを誇ってる。
今ではビンテージとして、世界中のプロの間で高額で取引されているほどだ。

(個人的には、特に、卓に何が使用されたのか非常に興味のあるところだ。)

その全てで、最高の仕事が為されている。

そして、バンドの顔であるリッチーのギター。それと双璧を成す、ジョン・ロードのハモンドオルガン。

バーチは、文字通り、二人のサウンドで双璧を作った。リッチーは言うまでも無くマーシャルだが、ジョン・ロードも、当時はリッチーに対抗するため、マーシャルを使用していた。

そういう意味では、同じような密度感で、サウンドの壁を作れたわけだ。
因に、ベースのロジャー・グローバーもマーシャルだ。

バーチのうまさは、この、ドラム、ベース、ギター、オルガン、の絶妙なバランスだ。

バンドの音圧感、迫力、厚さ、は、ボリューム・バランスが生み出す。そして、適度なリミッティングがドライブ感を増幅する。

そしてもう一つ。オンマイクとホールアンビエンス とのバランス。

例えば、世界中のロックキッズが一度は弾いたであろう『スモーク・オン・ザ・ウォーター』のイントロ。

スタジオでは絶対に出せない素晴らしく分厚いギターサウンドになっている。

しかも、ベースが入る頃には、すっとアンビエンスを引き、ライブ過ぎない音質に調整している。

ひょっとするとこの点が、後のスタジオ差し替え疑惑の根拠になっているのかも?

つまり、それだけ各サウンドがクリアだということだ。

しかしそれは、バンドの演奏能力の高さ、マイクとモニタースピーカーの少なさによる被りの無さによるものだ。そして何より、マーティン・バーチによる素晴らしい録音技術によるためである。

しかし、改めて僕が言うことでも無いが、今聴いても、この作品のドライブ感、迫力は、・・・全く色あせない、どころか、これまで数十年かけても、ロックバンドは何も進歩していない事を痛感させられる。

このドライブ感は、クリックなんぞ聴きながらでは決して生まれない。

まったくもって凄まじく質の高いものを、多感な中学生の頃に聴けたことを神様に感謝したい。

この後、バーチは、レインボー、ブラック・サバス、ホワイト・スネイク、アイアン・メイデン、ウイッシュボーン・アッシュ等々のブリティッシュ・ロック・バンドをプロデュース・エンジニアリングして行く。

いわゆる、へヴィ・メタル・ロックを生み出していったシーンなのであるが、へヴィ・メタルが様式美といわれる所以の一つが、バーチが生み出した端正なサウンドに他ならないのだ。

 

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    5 Responses to “名盤シリーズ#6”

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